相互供養

最近は本当に色々な情報がインターネットで手に入る便利な時代になりましたね。
私は結婚しているので、夫婦関係について他の方々がどのような意見をお持ちなのか興味があり、この前、夫婦関係についての問題を不特定多数で討論する掲示板をみる機会がありました。その中で以下のような夫婦喧嘩際の言葉のやり取りが書き込みされていました。

夫『俺が稼いできているから生活ができているんだろうが!』
妻『私がいなかったら家事・育児できないくせに!』

喧嘩ですから冷静ではないのでしょうが、互いに自分の言い分ばかりを主張し相手を傷つけてしまう思いやりのない発言をしていると思います。
この状態が続けばお互いにすごく不幸な時間が続くことになるのは想像に難くないです。
例えば、夫はこの状態でイライラしないで仕事ができるでしょうか?
そのせいでいらないミスを犯す危険もあるのでは?
妻は家事をしっかりこなせるでしょうか?
こなしたとしても家事で疲れた心身で子どもに優しく接することができるでしょうか?
両者の意見には互いに一理あるとおもいますが、思いやりのない言葉が悪いことをどんどん引き寄せるような気がします。

このような問題を解決するために私が有効であると考える教えが金剛流御詠歌の五綱目の中にあるので紹介しようと思います。

報恩歓喜の念をもって相互に供養すべし
(ほうおんかんぎのねんをもってそうごにくようすべし)

この世のすべてのものは自分ひとりでは存在しません。他の人々から生かされ、動植物に生かされその他数多くの自分以外の力によって生かされています。
報恩歓喜とはその恩に感謝し、それに報いる行為を喜んでしようということ。
供養とは、一般的には仏様にお花やお供物やお経などをお供えすることですが、そこには仏様に対する尊敬の念があり、仏様に何か良いことをしたいという思いがあるのだと思います。
つまり、相互に供養とはお互いに相手のためを思って良い行いをしてあげましょうということだと私は思っています。
これを略して相互供養と申します。
この場合を考えてみると、仕事・家事・育児はとても一人でできることではありません。
夫婦で負担を分担しているからお互いに仕事と家事・育児ができるわけです。
ですから相互供養を考えるなら以下のような労りの言葉をかけられるようになるべきであると思います。

夫『君が家事・育児をがんばってくれているおかげで仕事をがんばれるよ。ありがとう。』
妻『あなたが一生懸命仕事してくれているおかげで不自由なく生活できる。ありがとう。』

このような言葉をかけあえることができれば、互いに幸せな気持ちになるだけでなく、色々と互いにとってよいことが起こると思います。
例えば、夫は家族のために仕事を意欲的に頑張ろうと思えるのではないでしょうか?
もしそうなれば、その姿勢はまわりの人から評価もされるでしょうし、仕事での成功の可能性もあがると思います。
妻も夫のために家事を頑張ろうと思えるでしょうし、子供にも余裕をもって優しく接することができるのではないでしょうか?
そうできたなら子どもの心は安定し、勉強や運動に打ち込むことができ成績が上がるかもしれません。
このように相互供養には良いことが集まる力があると思います。

現代社会は本当に良い人間関係を構築するのが難しい時代になっていると思います。
夫婦の問題だけで考えても長時間労働・夫婦共働きはめずらしくなく、労働の後へとへとの状態で家事・育児を行う。そんな状態では上のような喧嘩が起こってしまうのもいたしかたないとも思います。
しかし、つらいからと自分のことばかり主張して相手をないがしろにしては幸せな人生はおくれないのです。
これは無論、夫婦にかぎったことではありません。どなたにも起こり得ることでしょう。
人を思いやることが難しい時代であるからこそ相互供養の精神は大切なのだと思います。
皆様が心の片隅に常に相互供養を意識され、より良い人生をお送りになりますことをご祈念致しております。

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