その道のプロとして

節分も過ぎ、立春という言葉の如く次第に春めいて来るかと思いきや、北海道は未だ寒い日が続き、まだまだ暖房に感謝しつつ生活をさせて頂いております。

さて、今世間では有料老人ホームにおいて入所者の転落死の事件がニュースとして取り上げられています。誠に悲しい事件で、故人の方々には心よりご冥福をお祈り致します。

この事件において介護職である元職員が殺害を認める供述を始めました。まだ真偽に関しては何とも言えないのですが、“人を介けて護る”という道に従事する者が犯した事件となればこれは本当に悲しい事件です。

また、昨今国会議員や教職員など人を導く立場にいる方々の倫理に反する不祥事のニュースは絶えることがありません。そしてこれは我々僧侶にもいえることで、このような事件が起きるたびに考えることがあります。

それはお大師様が「頭を剃って欲を剃らず。衣を染めて心を染めず。」という言葉を残しており、これは「多くの仏者は、頭を剃っても欲を剃らず、衣を染めても心を染めていない」即ち「僧侶になって頭を丸め、衣をつけたからといって真に覚った聖者というわけではない」という意味で、私も僧侶の道を志した身として自分自身日々精進を続けなければならないと戒めます。

そして、これはどの職種に対してもいえることでして、その職に就いたからといって真にその道の人間というわけではないということではないでしょうか。大切なのはその職にどれだけ誇りを持ってその道に従事し続けたか、信念を貫いて日々走り続けたか。誰かに「あの人は立派な○○だ。」と言われるようになって始めて「私の職業は○○です。」といえるのではないでしょうか。人に選ばれ、人を導き、人を助ける職種の方々には昨今本当に多く見られる不祥事のニュースが起きないよう、「誇り」という名のプロ意識を持って日々邁進して頂きたいと切に願います。

合掌

文章 K寺 A師

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