影響を受けるのは程々に。ここは日本ですよ。

ある日の事でした。家が完成しましたので、お祓いを行って欲しいと信徒さんより依頼されました。その家は地鎮祭と棟上げ式も当寺院で行っていました。

前述の地鎮祭等を含め、執り行う日時を決める際、拙僧は高野山檀信徒手帳(高野山真言宗参与会刊)の七曜と曜宿吉凶判断・二十八宿・十二直を参考にしています。日時を伝えたところ、「その日は十三日の金曜日ですが、大丈夫なのでしょうか?」と言われると、「関係ありません、良い日なので大丈夫です。」と答えました。そもそも十三日の金曜日が不吉な日となっているのは英語圏とドイツとフランスに限られています。所謂キリスト教が起源なので、仏教・神道が主な日本では該当しません。また十三日は虚空蔵菩薩の縁日でありますので、決して悪い日ではありません。同名の映画作品の影響の所為かもしれません。

ところで、近年ハロウィンが盛んに行われているようでありますが、拙僧はこの盛り上がりに対して、違和感があります。元々ハロウィンはヨーロッパにいた古代ケルト人による収穫祭が起源であり、前日に秋の収穫を祈って霊を招かないようにする儀式でありました。年数とともにこの祭りが転じて、子供たちが悪霊などに仮装して「トリック・オア・トリート(ごちそうをくれないと、いたずらしちゃうぞ)」という言葉を唱えながら家々を訪ね、菓子を集めて回る習慣があります。少なくとも拙僧の少年時代には無かったですし、日本とは全くの無関係なお祭りを『ごり押し』しているような気がするのであります。本来の意味を理解しているのは何%もいなくて、ただ表面的な楽しい部分を取り上げて、『楽しければそれでいい』と騒ぎ立てて自国の文化にしてしようとする勢いに、日本古来の文化が霞んでしまいそうな思いを募らせています。

宗祖弘法大師は「心を捨てて色を愛す」(十住心論)とのことばを残されています。現代の言葉に変換すると、本質を忘れてものの姿にとらわれる。つまりは、ただ見た目の楽しさや面白さに注目ばかりされて、由来や意義を知らないで真似事を行っている状態であり、影響を受けるのは程々にしてほしいと、この国に対して警鐘を鳴らしているかと思います。

合掌

文章 十一教区  N寺 K師

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