花咲く季節

5月になりました。自坊の境内にも色とりどりの花が綺麗に咲いて参りました。

福寿草、水仙、チューリップ、その中でもやはり一際目に留まるのは桜です。

冬の極寒に耐え、春の陽気を敏感に感じ取り、綺麗に咲き誇る桜は幾年見ても心が弾む感じが致します。

本来であれば桜の花見、ゴールデンウィーク、と楽しいイベントが盛り沢山の5月ですが、今年も昨年に引き続き自粛一色の5月となりました。

飲食店、商業施設、イベント会場、医療現場、様々な仕事に従事されている方々、また学生の方々も心待ちに計画を立てていた事が中止せざるを得ない状況になり大変落胆されている事と思います。

私も例年この時期は道内外のお寺に助法に伺う事が多く、桜に囲まれたお寺で法要に出仕し露店のお茶を頂戴したり、毎年この時期にお会いする知人と談笑したりと楽しみにしておりましたが、各寺院から助法お断りの連絡を頂く事となり残念でなりません。

数日なら道内外に出ても大丈夫、数時間なら集まっても大丈夫と根拠のない理屈をたてモヤモヤした気持ちでいっぱいでしたが、万が一の状況に陥った際は、果てしない後悔の念に潰されてしまうかもしれません。

 娑婆に殊にして さらに極楽を観ずることなし 何ぞ必ずしも十万億土を隔てん

興教大師覚鑁上人の「一期大要秘密集」の一文です。

私達の生きている現実は楽しい事ばかりでは無く苦しみも伴う世界です。しかし極楽を求めなくしても心の在り方次第でここが極楽になり得るという意味です。

今現在は決して満たされた状況にありません。普通の生活を過ごすのも困難な状況ですがその中にも小さな喜びがあり、今だからこそ気付く人の優しさがあります。

負の意識に取り込まれず、他の人を気遣う心を持ち共に現実を乗り越えて来年の桜を笑顔で見れる事を御祈念致します。 

                                  合掌。

                                  霊明寺  田中 慶孝 

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